2012年9月10日月曜日

冷え冷えメロン→態度の悪いロカンタ→チャイに釣られる→子犬のようについていく→トルコ人の家に宿泊→地獄絵図に直面する


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本日の走行距離116km 計4360km

6時起床したものの、外はまだ暗く、もう30分寝る。

再び起きて外に出てみると霧っぽく、久々にジャンバーを着込まなければならないほど肌寒い。
出発準備を追え、クッキーで簡単な朝食を食べたあと、さっそくの上り坂を漕ぎ始める。

10kmほど進むと、小さな町があったのだが休憩には早いので通過。
平坦になってきた道を漕ぎすすめると水汲み場を発見。
最近、水がそろそろ足らないかな・・・と思い始めた頃に登場してくれる水汲み場の存在にかなり助けられている。 

水を汲んでいると、近くの家から農家夫婦がスイカサイズのメロンを持って登場。
どうやら僕らに分け与えてくれるようだ。
メロンは朝の冷え込みのおかげもあり良い冷え具合、しかも甘さも十分で口の中いっぱいに甘味と水気がジュワリと広がる。

「ティシュクレ」感謝をして出発しようとすると、「待て待て」と今度は家庭菜園の中に入っていき、ごんぶとのキュウリを2本持たせてくれた。

「ホシュチャカルン!!」と出発すると、「ギュレギュレ!!」とお見送りしてくれた。
「ギュレギュレ」は日本の感覚で言うと「バイバイ」みたいなものなのだろうが、語感が可愛いので好きである。

10時頃Akhisarの街に到着する手前から大渋滞が始まる・・・「これだから都会は・・・」と名古屋市と大阪市でしかまともに生活していない都会少年の分際で愚痴ってしまう。

朝ごはんが貧相だったのでここで何か食べようと思ったのだが、中途半端な時間だったため大通り沿いで空いていた店は一件のみ。
選択肢がないので人気のないロカンタ(定食屋)で朝ごはんを注文。

非常に無愛想な受け答えのオーナーであったのだが、我慢して笑顔で対応していたのだが、どうやらアジア人嫌いのようで態度変わらず・・・のでこちらも愛想無しモードで、
・豆スープ
・パン
・ピクルスの酢漬け
を食べて出発。
値段は3.5Lと可もなく不可もない値段だが、対応悪く2人ともガッカリ・・・

しかも走り始めてすぐに裏道街に突入し、そこには庶民の定食屋がたくさんあった。
まぁ・・・仕方ない・・・と思い、とりあえず商店でクッキーなどの非常食を購入し、自転車を停めていた場所に戻ると、自転車2台はあるもののアサがいない。

???

自転車をおいて離れることなんてないはずなのにどうしたんだろう?
とあたりをキョロキョロ見渡すと、20mほど離れた茶店でトルコのおじさん5人ぐらいに囲まれて美味しそうにチャイを飲んでいた。

どうやら「お茶を飲ませてやろう」という言葉に釣られてホイホイとついて行ったようである、まぁ気持ちはわかる。
せっかくなので僕もお茶をご馳走になりながら、本日の道について確認する。
「ランパ ヴァル?(坂道ある)」とかぐらいは何とかトルコ語で尋ねることができるようになってきた。
「ランパ ヨーク(坂道ない)」と嬉しい言葉をもらいご機嫌で出発。
先ほどの朝食の残念感があっという間に払拭っされて嬉しい。

おじさんたちの言葉通り平坦な道をチリやトマト畑を眺めながら気持ちよく走る。
最近ずっと追い風なのでなお気持ち良い。
これだけずっと追い風なのは嬉しいが、いずれ北上するときにはずっと向かい風かと思うと気が重い・・・

先のことを考えても仕方がないので、乾燥させるために干されているチリを眺めながら「綺麗だな・・・」と現実逃避する。

しばし走り、Golmarmaraの町が見えてきたので少しチャイ休憩をしようと、店を探すと、遠くで手招きするおじさんが。

「なんだ、チャイをご馳走してくれるのかい?」と子犬のように2人で駆け寄っていったのだが、店員さんではなくただのお客さんのようだ。
まぁ店に入ったてしまったものは仕方ない、というかどこかには入る予定だったので、アイラン(塩ヨーグルト)を注文すると、「ケバブをご馳走してあげよう!!」とおじさん(アイテキン)が言ってくれた。

う~む・・・・と悩む2人。
というのもチャイをご馳走してくれるぐらいであれば遠慮なくいただくのだが、それ以上に財布に負担がかかりそうなものは一応遠慮するようにしているのである。
お金を節約しているといっても、多分僕らの方が日本に帰れば給料は良いのだし、旅人だからといって甘えすぎはよくないかな・・・と思っているので。

そして、ケバブ残念、と思いながら断腸の思いで「ありがたいけど遠慮しておきます・・・」と断りの言葉を述べると、アイテキンは目に見えるガッカリ感で「本当に要らないのか???」と訪ね返してくる。

うむむ・・・こういう場合はお言葉に甘えたほうが良いのかな?と2人で1個のケバブをご馳走してもらうことに。ありがとうございます、と最近与えられてばかりの30代夫婦。

ケバブを食べながら(コーラももらった)会話していると。「俺の家はここから30kmほど先にあるんだけどよかったら今夜泊まらないか?」と誘ってくれた。

話を聞くと奥さん子供と住んでおり、19時に運送会社の仕事が終わるからその後なら来てもらえると嬉しい。とのこと。

現在まだ12時。
おそらくアイテキンの住む街には15時にはたどり着くだろう。

う~む・・・と悩んだが、結局いつも通り流れに身を任せてお世話になることに。
簡単な地図を書いてもらい、仕事のあるアイテキンといったんお別れしチャイを飲みながらしばし時間を潰す。

14時頃まで近所の子供と持っていた風船を使用し遊んでいたものの、風船が割れたことによりあっという間の終焉。はかない世の中である。

出発したあと、18時頃に街に到着し、スーパーでアイランと炭酸水を買って飲みながら休憩。
のんびりしていると、英語を話すことができるおじさんが「どうしたのかね?何か困っていることはあるかい?」と声をかけてくれた。
「いや、知り合いの家に泊めてもらえることになったんで待ち合わせの時間まで待っているんです」と答えると、
「残念だ、予定がなければうちに招待したいと思ったのだが・・・相手の連絡先はあるかい?きみたちがもう待ち合わせ場所に着くと連絡してあげるよ」と言ってくれたので、待ち合わせには20分ほど早かったが、駅前に行きチャイハネ(チャイ屋)で待つことに。

チャイハネはイメージ通りおじさんばかり、トルコの居酒屋みたいなものなのだろうが、なんだかお茶を飲みながら延々と談笑するおじさんたちの姿は微笑ましい。

こういう場所に女性のアサがいても良いものなのだろうか?など考えてしまうが、お客のおじさんたちも店員さんも外国人である僕らは別枠として認識してくれているようだ。

ぼんやりしているとおじいさんと孫がやってきて、「アイテキン・・・・」と声をかけてくれた。どうやらアイテキンの仕事が長引き、2人が迎えに来てくれたようだ。

家に行く前に、ガレージ用の別宅に寄ってくれ、そこの部屋の中に自転車を入れるようにと身振りで伝えてくれた。
おじいちゃんが「プロブレム ヨーク!!(問題ない)」と自信たっぷりに言ってくれた言葉を信じ、自転車と不必要な荷物をおいて、アイテキン家へ。

途中おばあちゃんとも合流し、家に入ると、若い女性が2名、そして子供が5人ほどいた。
観察した結果、この家で2家族が住んでいるようで、アイテキンの家族と、弟夫婦の家族がいるらしい。

アイテキン家族
・本人 アイテキン3?歳
・妻  ビルギュル35
・長男 ベルベル(本名不明、床屋)19
・次男 イスマイリ14
・三男 デニスハン5

ビルギュルの弟夫妻
弟  オスマン
弟嫁 フュルヤ
子供 2

そして
近くに住む
ビルギュルの父 ネジャティ65歳
ビルギュルの母 ラヒネ

この大勢の中で英語を話せる人物は皆無・・・いや、数字と挨拶はなんとかできるのが数名。
こんなときのためにTreeで指さし会話帳をコピーしてきてよかった。

しばし、指さしを使用し、自己紹介などをして過ごし(次男イスマイリが気を使ってくれた)、「足を洗いますか?」と尋ねられたので足を洗っているとアイテキンも帰ってきたので、晩御飯。

晩御飯は
・タロハナスープ
・サラダ
・肉と茄子の煮込み
・オクラのトマト煮込み
・インゲンの炒め
・ピラフ
・パン
・ぶどう
どれも美味しい。

食卓に入りきらず床で食べている子供たちを含めギュウギュウの家の中はとても賑やかだ。
大変だろうけど大家族もいいな・・・と温かい目で眺めてしまう。(きっと大変なことも多いだろうが)

食後、「外でチャイを飲みながら涼しもう」とアイテキンが誘ってくれ、家の軒先にマットを敷いて皆で談笑。

・・・と思ったが、突然トラブルが巻き起こるのが世の常。
アサが風呂に入っているあいだに問題が起きる。

事の発端は三男のデニスハーン。
彼が情緒的にかなり難しさがあることは晩御飯中から気がついていたのだが、外に出てからもワガママなどの問題行動の連続。父アイテキンは怒りつつも、来客中のため我慢していたのだが。

おじいちゃんのネジャティが耐え兼ねた様子で注意しに行くと。
あろうことかデニスハーンは「近づいたら叩くぞ!!」的なジェスチャーを・・・

これに激怒したネジャティが「叩けるもんなら叩いてみろ!!」と頬を突き出した瞬間。


バチーーーーーン!!


夜空に吸い込まれそうな綺麗な音と共にデニスハーンの張り手が60歳年上のネジャティの横っ面にクリーンヒット。


・・・・そこで叩きますか・・・あなたは・・・

と呆然と眺めることしかできなかった僕の目の前で次に起こったのは、鬼のような形相で60歳年下の孫の横っ面にアントニオ猪木さながらの張り手を見舞うネジャティの姿。

吹っ飛んだ孫を鷲掴みにして引き起こし、反対サイドの頬にも「元気ですかー!!」と張り手をぶちかますネジャティ・・・・うむ、この地獄絵図は実に気まずいな・・・

気の利いた言葉も発することができず、しかもネジャティの行動が100%間違いとも思えないので静観していると、横で同じく静観を決め込んでいるアイテキン・・・・


いや・・・君はそれでいいのかい???


と、思ったがトルコ社会は年長者に服従なのかもしれない。
この異常事態に気がついたビルギュルが台所から飛んできて、ネジャティから強烈な2発をお見舞いされたばかりのデニスハーンの横っ面に一撃。


おぉ・・・とどめの一撃だ・・・


と、思ったら今度はネジャティがビルギュルの横面に強烈な一撃!!


・・・・なんで???


今のはおかしくないかい?

と思っているあいだに、ビルギュルを連れて家に入るネジャティ。そして中から平手2発の音の後に続いて聞こえてくる泣き声・・・

この状態で戸惑うフュルヤの子供2人と静観を決め込みすでに地蔵のようになっているアイテキン。
唯一まともな行動をしているのが強烈な3発を喰らい泣き崩れているデニスハーンをなだめる次男イスマイリ。

トルコの暖かい人々の裏側に隠された男性優位性、暴力性を感じてしまった。

何だか、韓国人や昔の日本人に近い感覚なのかな。
と、思いつつ、どうしたものか?と考えていると「シャワーが空いたから入ってきてくれ」とのこと。

まぁ・・・家庭のトラブルをお客に見られるのはしんどいだろうと、シャワーに入ることに。
シャワーを浴び終わり、再び出て行くと、ぎこちないが少しなごみ始めた一同の姿。

お茶を飲みながらあれこれ会話をしているとフュルヤの旦那オスマンが帰ってきた。
その後、立て続けにお客が来て僕らと記念撮影をとっていく。

そうこうしている間に、気が付けばデニスハーンとネジャティが楽しそうに話し合っている。

・・・・仲直り早くないか???

と思ったが、ネチネチ続くよりもいいことだからまぁ良い。

チャイを飲み、笑顔で来客と話したあと「あいつは悪い奴だ」などと陰口を言う一面もあり、なんだかどこの国も一緒だな。と親近感を感じる。

オスマンから家の中で買っている鳩を見せられ「これは日本にもいるか?」と尋ねられ嘘をつくのもなんなので「いるよ・・」と答え終了。

長男のベルベルが帰ってきたところで24時前だったので、家に入り再び談笑。
指差しを使いながらビルギュルがアイテキンについての不平を述べると、イスマイリも加勢して「だまれ!!」「恥を知れ!!」の文字を指差すのがおかしかった。

そして話の流れ上、長男のベルベル君が僕の髭を剃ってくれることになったので、まな板の上の鯉になり、お任せすると、もみあげと、襟足がピシッと綺麗に整ったトルコ風に仕上がる。
まぁ別にいまさら見た目はどうでも良い。

1時を過ぎたあたりでさすがに就寝することに。
それにしても興味深い一日であった。

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